毎日子育てをしていると、思い通りにいかないことの連続です。自分の未熟さに直面して「あぁ、またやってしまった」と自己嫌悪に陥る夜が、僕にもあります。今日は知育スコアのデータの話ではなく、親である自分自身の、少し情けない話から始めさせてください。
僕は2児の父で、本業のかたわら勉強や体づくりにも時間を使おうとしています。ただ、いざ自分のための時間を作って始めようとすると、決まって子どもたちが「パパー!」と入ってくる。そして予定通りに進まないことに、ついイラッとしてしまうのです。
ある夜、日々の疲れが溜まっていて、妻に少しだけストレッチを手伝ってもらおうとしました。さあ少しリラックスできる、と思った矢先、子どもたちが部屋に入ってきて結局できずじまい。頭では「子どもなんだから仕方ない」と分かっているのに、その瞬間、自分でも驚くほどイライラしてしまいました。でも一晩経って冷静になると、思うのです。「優先すべきは、やっぱり家族だよな」と。
イライラの正体は「リソースの奪い合い」だった
なぜこんなにイライラするのか。冷静になって考えると、その正体は「限りある自分のリソースの奪い合い」でした。時間、体力、心の余裕。どれも限られている中で、なんとか自分の分を確保しようと必死になっている。だからこそ、それが予定外に削られた瞬間に、感情が大きく波立ってしまうのだと気づきました。
でも、視点を変えればこうも言えます。子どもが「パパー!」と無邪気に寄ってきてくれる時期、親を全力で求めてくれる時間は、長い人生のスケールで見れば本当に一瞬で、限られています。いずれ彼らは自分の世界を持ち、親の元から離れていく。そう考えたら、自分の時間を邪魔されたとイライラしている場合じゃないな、と自分を戒めました。とはいえ、頭で分かっていても、また次の日にはイラッとしてしまう。この繰り返しこそが子育てなのかもしれません。
そもそも「感情のコントロール」は、なぜ大事なのか
ここ数年、子育てや教育の分野で「非認知能力」という言葉をよく耳にするようになりました。これは、テストの点数のように数値化しやすい「認知能力」と対になる概念で、やり抜く力、協調性、自己肯定感、共感力、そして自分の感情と折り合いをつける力(自己制御・アンガーマネジメント)などを指します。
教育心理学や教育経済学の議論では、こうした非認知能力が、長い目で見たときの学業や人生の充実に大きく関わるとされています。どんなに知識があっても、感情に振り回されて行動できなければ力を発揮しにくい。逆に、自分の機嫌を自分で扱えて、他者とうまく関われる人は、持っている力を活かしやすい。だから多くの親が「うちの子には、自分の感情と上手に付き合える子になってほしい」と願うわけです。
MANGAKNOWが漫画を5つの軸で採点しているのも、この考え方が下敷きになっています。「論理・数理」「言語・知識」「創造・探究」という認知寄りの3軸(Head)に加えて、「対人・社会性」「対自・自律性」という非認知寄りの2軸(Heart)を独立して評価している。感情のコントロールは、まさにこのHeart側の力です。
一番「感情のコントロール」を試されているのは、親自身かもしれない
親としてはつい、「子どもには自分の機嫌を自分でとれるようになってほしい」と高尚なことを願ってしまいます。でも、ストレッチを邪魔されて一人でイライラしている自分を振り返ると、苦笑いするしかありません。感情のコントロールを一番学ばなきゃいけないのは、他でもない親の僕自身でした。
子育ては、親にとっての究極の「非認知能力トレーニング」なのかもしれない、と最近は思います。子どもという、自分の思い通りにはならない存在と毎日向き合い、イラッとしては反省し、自分の感情をなだめる。その繰り返しの中で、親もまた少しずつ鍛えられている。子どもに「怒らないで話そうね」と言う前に、まず自分がやってみせる——これが一番難しくて、一番効くのだと痛感しています。
漫画は「感情との向き合い方」を追体験させてくれる
では、子どもが(そして親も)感情との付き合い方に触れるのに、漫画はどう役立つのでしょうか。漫画の強みは、キャラクターが理不尽な状況に怒り、悲しみ、葛藤し、それでも自分の感情と折り合いをつけて他者と関わっていく姿を、物語として丸ごと追体験できることです。説明として「感情をコントロールしよう」と言われるより、登場人物の選択を通して感じ取るほうが、ずっと深く残ります。
MANGAKNOWのデータで、非認知の2軸(対人・社会性/対自・自律性)が高い作品をいくつか挙げてみます。いずれも「読めば必ず非認知能力が伸びる」という保証ではなく、あくまでそうした力に触れる場面が多いとスコア上は評価されている、というデータ上の傾向です。最終的な相性は、お子さんの年齢や興味に合わせてご判断ください。
め組の大吾——知育スコア38点で、対人・社会性9/対自・自律性9と、非認知2軸がともに最高クラスです。命がけの消防の現場で、仲間と連携しながら使命感と向き合い、自分を変えていく主人公の姿が描かれます。「自分の感情をどう仕事や仲間に向けるか」という点で、刺激の多い作品です。
ハイキュー!!——知育スコア36点、対人9/対自9。勝ち負けに揺れる感情、悔しさをどう次に変えるか、チームの中で自分の役割をどう受け入れるか。スポーツを題材に、感情の扱いと協働が繰り返し描かれます。小学生から楽しめるのも親としては安心しやすいポイントです。
鋼の錬金術師——知育スコア40点、対人8/対自9。喪失や罪悪感といった重い感情を抱えたまま、それでも前に進もうとする兄弟が描かれます。怒りや悲しみを否定するのではなく、抱えて生きる姿は、少し上の年齢の子や大人にも響きます。
ONE PIECE——知育スコア37点、対人9/対自8。仲間のために感情を爆発させ、また受け止める。多様な仲間との関係の中で、共感や対立、和解が大きなスケールで描かれます。「人とどう関わるか」のモデルケースが豊富です。
こうして並べると、感情や人間関係を強く描く作品は、必ずしも「お勉強的」な作品ばかりではないことが分かります。バトルやスポーツの中にこそ、感情の扱い方のヒントが詰まっている。それを数値で可視化できるのが、知育スコアの面白さだと思っています。
なぜ「物語」だと、感情の学びが残りやすいのか
「感情をコントロールしよう」と言葉で教わっても、なかなか身につきません。これは大人でも同じです。一方で、好きなキャラクターが怒りをこらえた場面、悔しさを次の行動に変えた場面は、不思議と記憶に残ります。理由は単純で、物語には「感情の文脈」がまるごと付いてくるからです。なぜその人がそう感じたのか、その感情をどう扱い、結果どうなったのか。原因から結果までが一本の線でつながっているので、知識ではなく「体験」として入ってくる。だから読後にふと、自分の場面で思い出せるのです。
子どもにとってはさらに、キャラクターという「自分ではない誰か」を通して感情を眺められる点も大きい。自分の怒りや悲しみは直視しづらくても、「この子、今どんな気持ちだろう」となら落ち着いて考えられる。これが、感情を客観視する練習になります。漫画が単なる娯楽を超えて、感情教育の入り口になり得るのは、このためだと考えています。
非認知能力が高い作品を、もう少し
先に挙げた4作品のほかにも、対人・社会性や対自・自律性のスコアが高い作品はたくさんあります。データ上の傾向として、いくつか紹介します(いずれも「必ず効く」ではなく、そうした要素に触れる場面が多いという評価です)。
宇宙兄弟——知育スコア40点、対人8/対自9。夢を諦めかけた大人が再び挑戦する物語で、焦りや嫉妬といった感情と向き合いながら、チームの中で自分の役割を見つけていきます。大人が読んでも刺さる作品です。
カードキャプターさくら——知育スコア37点、対人9/対自8。小学生の主人公が、優しさや勇気をもって人と関わる姿が丁寧に描かれます。低年齢から親しみやすく、家族や友情の多様な形を肯定的に描く点も特徴です。
DAYS——知育スコア31点ですが、対人9/対自9と非認知2軸は最高クラス。才能ではなく「仲間への貢献」という純粋な動機で走り続ける主人公が、利他の気持ちとチームの絆を真正面から描きます。総合点だけでは見えない強みが、軸別スコアだと見えてきます。
このように、合計点が同じでも「どの軸が高いか」で作品の個性は大きく変わります。感情や人間関係を重視するなら、合計点よりも対人・社会性/対自・自律性の数字に注目して選ぶと、目的に合った一冊に出会いやすくなります。これこそ、スコアを5軸に分けている理由です。
年齢に合わせた、はじめの一歩
同じ「感情を描く作品」でも、年齢によって入りやすさは違います。小学生なら、ハイキュー!!やカードキャプターさくらのように、身近な学校生活やまっすぐな友情が描かれる作品が入りやすいでしょう。中学生以上になると、鋼の錬金術師や宇宙兄弟のように、喪失や挫折といった少し重い感情を扱う作品も受け止められるようになります。背伸びしすぎず、いま夢中になれるものから始めるのが、結局いちばん長続きします。
家庭で親ができる、ささやかな工夫
専門家ではない一人の親として、僕自身が意識している(できていない日も多いですが)ことを、いくつか挙げてみます。
ひとつは、イラッとしたら一拍おくこと。その場で反応せず、一晩、せめて数秒だけでも置くと、だいぶ言葉が変わります。ふたつめは、感情に名前をつけて口に出すこと。「今ちょっとイライラしてる」と親が言葉にすると、子どもも自分の感情を言葉にしやすくなる気がします。みっつめは、漫画を一緒に読んで「この子、今どんな気持ちだと思う?」と問いかけること。物語のキャラクターの感情なら、子どもは安心して語れます。それが、自分の感情を見つめる練習になります。
よくある質問
Q. 漫画を読むだけで非認知能力は育ちますか?
非認知能力は、実生活での体験の積み重ねが基本です。漫画はあくまで「他者の感情や葛藤に触れるきっかけ」であり、それだけで力が伸びると保証するものではありません。読んだあとに親子で感想を話す、といった対話とセットにすると、より効果が期待できると考えています。
Q. 何歳から読ませていいか分かりません。
作品ごとに対象年齢の目安が異なります。MANGAKNOWでは各作品ページに対象年齢の目安を載せているので、スコアと合わせて確認してみてください。暴力表現などが気になる場合は、まず親が試し読みするのが安心です。
Q. 親が感情的になってしまうのを直すには?
これは僕も日々失敗しています。完璧を目指すより、「またやってしまった」と気づいて、子どもに素直に謝れること自体が、子どもにとっての良いモデルになる——そう考えると、少し気が楽になります。
完璧な親なんて、どこにもいない
子育てをしていると、つい「いつも笑顔で余裕のある、完璧な親」を目指してしまいがちです。でも現実は、ストレッチを邪魔されてイライラし、後からこっそり反省する泥臭い毎日の繰り返しです。
最初から完璧な親なんて、どこにもいません。子どもと一緒に笑って、悩んで、時にはイライラして反省しながら、一緒に育っていけたらそれでいい。感情のコントロールという非認知能力を、僕も子どもと並んで練習している最中です。その練習の相棒として、漫画はなかなか頼りになります。
「人との関わり方」「自分の感情との向き合い方」を描く、非認知能力スコアの高い作品は、下のページにまとめています。お子さんに、そして自分自身に、ヒントが見つかれば嬉しいです。